オートクチュール刺繍で作る
白鳥のブローチ。
今回は、少し違う、
特別なレッスンのお話です。
「白鳥のブローチ」との出会い(展示会)
きっかけは、秋の展示会でした。
私が販売用として制作した
「白鳥のブローチ」を
SNSの投稿で見てくださった方が、
展示会にお運びくださり、
「このブローチが、
ずっと頭から離れなくて…」
とお話しくださったのです。
「やっぱり素敵ね~」
とおっしゃったものの、
そのときは購入されずにお帰りになりました。

ちょっと何かが違ったのかな?
と思っていたら、
次に別の場所でお目にかかったときに
「実はあのブローチ
作ってみたいんです!」
とおっしゃいました。
私は、正直びっくりしました!
展示会以来、
ずっと心に残っていたそうです。
その方は、
オートクチュール刺繍はほとんど未経験。
ただ、ビーズアクセサリーなど
ものづくりのご経験はあり、
「刺繍ならできるかもしれない」
そう思われたようです。
技術的なハードル
とはいえ、
この白鳥のブローチは
・特殊な刺繍糸を使っている。
・角度によって表情が変わる繊細な仕上がり。
という点からも、
ディプロマ修了の方でも
時間内に完成させるのでかえ
難しいレベルの作品です。
そのこともお伝えして、
再度、難しい旨をお伝えしました。
それでも、
「作ってみたい」
とおっしゃったので、
「まずは体験レッスンを受けていただき、
その上で判断させてください。」
とお伝えしました。
正直なところ、
その時点で難しいと感じて
断念されるかもしれない…
そう思っていました。
けれども、
体験レッスンの際に伺ったお話が、
私の気持ちを大きく動かしました。
忘れられなかった理由
その方は、バレエ愛好家で、
「白鳥の湖」は
別格な思い入れがあるとのこと。
そしてこのブローチが、
羽の雰囲気も、
頭に王冠をのせた姿も、
「まさにイメージそのものだった」
とおっしゃってくださいました。
講師としての決断
その想いを伺ったとき、
「このように想ってくださる方にこそ、
この作品を作っていただけたら嬉しい」
そう思いました。
そんなこともあり、
今回は特別に、
レッスンをお受けすることにしました。
ただし、
・所定の時間内での完成は難しいこと
・追加レッスンが必要になる可能性
・完成度には個人差があること
それらもすべて
お伝えした上でのスタートです。
それでも挑戦したいという想い
ご本人の想像以上に
難しいことはお伝えしたのですが…
「それでも作りたい」
「完成度が低くてもいいんです」
「この作品を自分で作ることに意味があるので」
と、まっすぐなお気持ちで
お話しくださいました。
実際のレッスン
レッスン時間は、
当然、通常の3時間では収まらず、
ほぼ1日かけての制作となりました。

事前にご自宅の準備をすべて整え、
一日で仕上げる覚悟で
臨んでくださった姿が印象的でした。
完成と価値
時間はかかりましたが、
ひと針ずつ丁寧に重ねられた白鳥は、
とても美しく仕上がっていきます。

思い入れがあるからこそ、
手を抜かず、
最後まで向き合われた結果だと思います。
その集中力は、まさに脱帽です。
完成したブローチは、
ただのアクセサリーではなく、
その方にとって特別な意味を持つ
一点になりました。

オートクチュール刺繍は、
時間も手間もかかる手仕事です。
「どうしても作りたい」
その想いがあるとき、
作品はそれ以上の
価値を持つものになるのだと、
改めて感じた
わたしにとっても特別なレッスンでした。
最後に
今回のようなレッスンは、
通常のカリキュラムとは異なります。
どなたでもお受けしているものでは
ございません。
技術的な難易度や制作時間を踏まえ、
体験レッスンでのご様子や、
制作に対する想いをお伺いした上で、
お受けできるかどうかを
判断させていただいております。
それでもなお、
「この作品を自分の手で形にしたい」
そう強く思われる方のために、
今回のようなレッスンが生まれました。
オートクチュール刺繍は、
丁寧な手仕事です。
だからこそ、想いが形になったとき、
とても美しく
仕上がるのだと感じています。
『想い』から始まるものづくりの美しさを、改めて感じたひとときでした。



